愛着の基礎知識(1)〜愛着が作られる仕組みはどうなってるの?

不安そうに親の胸にしがみつく生後半年くらいの赤ちゃん

安定型の愛着がどれほど大事なものなのか?気付く保護者さんも増えてきました。その反面、目に見えない『愛着』が子どもたちの中にどう作られていくのかイメージしにくいものです。

『毎日の子育てが愛着の形成にどんな影響を持つのか?』これを知らないと、育児に自信が持てず不安になったり焦ったりすることにもつながっていきがち。

今回は一生を支えてくれる自信の根っこ、愛着が作られる仕組みを解説します。

赤ちゃんたちにとって、普段の生活が『今だけのもの』ではなく、将来に向けてどれだけ大切な時間かがわかるはずです。

愛着は脳の中のプログラム

『愛着の絆を結ぶ』とも表現されますが『いつもそばにいてお世話をしてくれる人』との間で、絆を結ぶことで愛着が作られます。一般的には母親が多いですね。

愛着が作られるのは脳の中。とは言っても『愛着』が脳のどこかにニョキっとできるわけではありません。

コブのように形を作ってできるのではなく『脳の働き具合』、プログラムなのです。

わたし

プログラム?

具体例を知りたい

わたし(8才)

例えば、困った時に「ちょっと困ってるんです。助けてくれませんか?」とためらいなく仲間に相談することを選ぶ脳のプログラムもあるでしょう。
または「頑張りましたね、素晴らしい!」と褒められた時に、素直に喜べるプログラムもあります。

わたし

プログラムの具合によって

どんな反応をするかが決まるわけね

わたし(8才)

愛着は感情に関係する

喜びや悲しみ。満足や愛情。怒りや恐怖・拒否など、感情の生まれるところに『愛着』が大きく関係します。

同じ経験をしても愛着の仕組みが違えば反応が違い、褒められて喜べる人もいれば「いや、そんな自分なんて」と冷や汗をかく人もいます。

つまり、人間として生きていくのに都合の良い反応をするプログラム『=安定型愛着』は未来の『自信』を支えるものと言えます。

わたし

生きていきやすいプログラムもあれば

生きづらいプログラムもあるね

わたし(8才)

泣きは緊急警報

愛着が作られるのに最も大事な時期は5歳ごろまでです。
その頃まで『安心した状態』で育つと、より望ましい安定型の愛着が作られます。

例えば人見知りが始まった頃、知らない人が近づくと赤ちゃんはたいてい泣きます。
『怖い』と感じたから泣いたわけですが、一番そばにいて育ててくれる人(愛着の絆を結ぶ相手)が抱っこするとピタッと泣き止みます。

『安心』すると泣き止んだのですね。

『嫌な感じ』『怖い』『不満』を訴えるために赤ちゃんが泣くこと。

それは、自分で自分を守れない弱い存在が、自分の身を守るために生まれた時から持っている『緊急警報』なのです。

脳の扁桃体が緊急警報を出す

緊急警報を出すのは、脳の中の『扁桃体/へんとうたい』という部分です。
快か不快か?『気分』に関わる仕事、反応を起こします。

扁桃体は全ての感覚と大脳皮質の多くの領域から情報を受け取る。(中略)恐怖の場合は特に活性化する可能性がある。

(1)

全ての感覚とは、『見ること』『聞くこと』『皮膚の感覚』『ニオイ』『口にするもの』などのあらゆる刺激のこと。

中でも特に『嫌な感じ』『怖い』『不安』というネガティブな感覚に敏感です。
「〇〇が△△だから怖い」といった理由づけではありません

命を守るシステムですから『反射的』に警報を出します。

安心で『愛着』が育つ

『不満』『寂しさ』『甘え』。


こういった『今なんとなく嫌だ・満たされない』気持ちがあったとき『抱っこや優しい声掛け・撫で撫で』などで『安心』させてもらえた……

このステップを日常的に、何度も経験すると、安定型の愛着が作られることがわかっています

わたし

「世界は安心だ」ってわかるのね

扁桃体も学習するんだよ

わたし(8才)

安心で安定型愛着が作られる理由

扁桃体の活動を私たち大人を例にして見てみましょう。

不安な時にすごく頼りになる大好きな人が「どうしたの?大丈夫よ」と抱き締めてくれたら、嬉しいし安心します。

その安心できることが『いつも必ず』だったら?
「自分は大丈夫。きっと助けてくれる人がいる」と、何をするときも勇気や自信が湧いてくるはずですね。

赤ちゃんの頃にしょっちゅう泣くのは、いろいろな刺激にすぐ『緊急警報!』と過敏に騒ぐ扁桃体の活動のせいです。

でも心配と安心を繰り返すうちに「これくらいのことなら警報出さなくてもいい」とだんだん穏やかになって、「自分は大丈夫」という感じが無意識の中に根を張ります。

それが『安心によって安定型の愛着が作られる理由』なのです。

まとめ

愛着は脳の中に作られる仕組みです。

赤ちゃんが小さいうちは脳の中の『扁桃体』が敏感に恐怖や不安の緊急警報を出し、泣いて知らせてくれます。
どうか抱っこや優しい言葉掛けで、安心させてあげてください。

怖いけど安心させてもらった、その経験が何度も繰り返されると『大丈夫な感じ』が小さい人たちの脳の中に『安心・自信・信頼』などとして定着します。

それはまさしく安定型の愛着。
大人になってもずっとその人を支えてくれる『安定型の愛着』は、毎日の生活の中で脳の中に作りあげられていくのです。

参考文献

(1)リザ・エリオット. 赤ちゃんの脳と心で何が起こっているの?, 楽工社, 2017, p. 385

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