人生を支えてくれる『自信』『社会性』など、非認知能力を高めるためにも「安定型愛着つくろう~」とおすすめしているわけですが、今回は『愛着を作ってあげられる大事な時期はいつからいつまで?』という話です。
ざくっとおさらい『愛着』
愛着は乳幼児期に『育ててくれる、特別関係の深い人とくっつく』ことで作られます。
「自分は守られ、受け入れられている」という安心。
愛の基本形を学んでいるともいえる愛着は人生を通してその人を支えてくれる大切なものです。
言葉を話せない赤ちゃんや幼児さんが『泣いてくっついてきたら抱きしめて安心させましょう』
不安を安心で癒す=愛着が作られる
〈安心〉を必要とする期間。
それは安心させてくれる安全基地(一般的に母親が多いが『父親や祖父母』の家庭もある)を支えにしながら、赤ちゃんが自信を育てていく期間とも言えます。
わたし
わたし(8才)
例えば『後追い・人見知り』です。
赤ちゃんも、生まれてすぐは人見知りしません。
誰が抱いても怖がりませんね。看護師さんでもおばあちゃんでも、隣のおばちゃんだろうと拒否しません。
それが生後半年くらいを過ぎるとだんだん人見知りし始めます。
とにかくママ!パパが主に育てているなら、パパでなきゃダメ!って状況になります。
後追い期間の赤ちゃんと生活している時、ワンオペさんはゆっくりお風呂にも入れません。
ひとりでチャチャっと髪を洗っているときに『背後の風呂ドアをかきむしりながらぎゃー!っと泣き叫ぶ後追い中の我が子』を見たことがある人、たくさんいるでしょう?
わたし
わたし(8才)
赤ちゃんは肌の触れ合いや、匂いとか(中略)近くのものを認知する力は敏感です。 けれど、遠くのものを認知する(中略)聴覚視覚などの発達は0歳後半から(である/筆者補足)
(1)
生まれてすぐは目も良く見えません。物事を理解する力もそれほどない。
でも生後半年を過ぎる頃の赤ちゃん(個人差あり)は、『いつものひとは大好き安心!でも、知らないものはこわい!』となります。
こわい!と思えば、当然安心を求める。
これが『人見知り・しがみつき行動』となって表れ始めるんですね。
泣く・見つめる・そばに寄ってくるのも、愛着を作る行動です。
こうやって何度も何度も『不安』→『安心』を経験するうちに、愛着が作られていきます。
『自信の土台』が出来ていくんですね。
愛着形成=安心キャンペーン中
人見知りは、始まる時期も終わる時期も個人差が大きいです。
『生後6ヶ月になりました、1年間の人見知りを開始します。ピコーン♪』とは始まりませんね?
わたし(8才)
人見知り時期や親を求める間は、その子の〈愛着形成:安心キャンペーン中〉と覚えててください。
頭の中で『愛着の基礎工事』がどんどん進んでいる期間です。
その間は抱っこやハグなど、その子にあった泣き止む方法で安心させてあげましょう。
人間における愛着行動は食物や保温の報酬がなくても発達しうるものである
(2)
ミルクを飲ませてほしい、体温で温めてほしいといった『具体的な利益』だけを求めているのではありません。
とにかく一緒にいたい!安心したい!という、生き物・ほ乳類として『本能的』な行動。それが愛着なんですね。
本能的な行動だから、我慢はできません。
「安心したい」という本能的な気持ちに、しっかり応えてあげることが必要なんです。
- 〈安心〉を求めるのはその段階まで発達したという嬉しい証拠
- 後追いや人見知り行動が激しい期間は〈安心キャンペーン中〉
〈安心〉キャンペーンはいつ終わるか?
いつまで『泣いたら抱っこ』が続くの……?自分のことはもちろん、家のことも満足にさせてもらえない。一日中追い回されます。「もう、勘弁して欲しい(泣)」ってなります。
でも小学生を想像してみてください。
「ママー!知らない先生がいるよぉ!」と人見知りなんかしませんね?
盆と正月しか会わなくても、おじいちゃんおばあちゃんの顔見て泣いたりしません。
大丈夫です。
小学校よりもっと、ずっとずーっと早く終わる。
愛着に詳しい専門家は『特に重要な期間は6ヶ月から1歳半まで』と言います。ただし『愛着だけでなく、しっかり親子の信頼をつなぐために3歳、余裕を持って5歳くらいまでは重要期間と捉えた方が良い』とアドバイスする論もあります。
『いつまで』と決めつける表現には気をつけたいです。
その子の愛着形成が十分な期間は、育った後でないと確認しにくいのですから。
情緒不安や問題行動が起きてから「もうちょっとしっかり愛着を作ってあげた方が良かったのかも知れませんね」なんて誰かに診断されても納得しにくいでしょう。
長め長めに、余裕を持って愛着を作る期間を考えて置いた方が安全です。
- その段階を過ぎてしまえば『抱っこ』でなくても安心できるようになる
- 『愛着がしっかり作られる』とは『安心と自信が自分の中(脳)に出来ている』ということ
まとめます
生まれて半年もすれば「いつもお世話をしてくれる人はこの人だ」と赤ちゃんも理解し始めます。
その時からが愛着の重要な基礎工事期間。
じーっと見つめてくる、近寄ってくる、抱っこをせがむ、すがりつく、離れたくないと泣く……全部愛着工事の行動です。
充分に頼って、充分甘えさせてもらった子は、しっかり自立できます。
赤ちゃんが小さい時は言葉でのコミュニケーションが取れません。
『手ごたえがない』とか『大人と関わりたい』『自分は何やってるんだろう、他の人は楽しそうでいいなぁ』なんて気持ちになる瞬間もある。
だってそれまで、成熟した大人としての生活を十分味わっていたんですもんね。
だからこそ!
『いま、赤ちゃんはどんな風に成長している段階なのか』
『何が?なぜ?必要なことなのか?』を知ったら。
きっと今のお世話に無限の価値がある!って確信が持てますよ。
- 愛着=アタッチメント。くっつくことで、安全や安心だけでなく、通じ合う関係を求める
- 〈安心〉を求めるのは、人の見分けができる段階まで発達した証拠
- 後追いや人見知り行動が安心を求める期間の目安
- その発達段階を過ぎれば『とにかく抱っこ』でなくても安心できるようになる
- 『愛着がしっかり作られる』とは『安心と自信が自分の中(脳)に出来ている』ということ
参考文献
(1)杉山登志郎. 子育てで一番大切なこと: 愛着形成と発達障害,講談社現代新書, 2018, p. 51
(2)中野明德. ジョン・ボウルビィの愛着理論: その生成過程と現代的意義, 別府大学院紀要(19), 57, 2017-03.