「いい大学に入るために勉強するの?」「いい会社に入るための大学なの?」これでいいのだろうか、と今の教育に不安を持つ人が増えてきました。
世の中の仕組みは、たった今もどんどん変わっています。今の子ども達は、私たち大人が生きてきた時代からは『全く想像もつかない時代』を生きることは間違いありません。
では今、親としてどうすればいいのでしょうか?今回は『教育を一から考え直す第一歩』です。子どもに「なんで勉強しなくちゃいけないの?」と聞かれたときにどう答えるか?親としての考えもアップデートするきっかけにしてみましょう。
『勉強』は目的の手段
『勉強とは何か』を、もう一度確認する必要があります。勉強は目的を達成する手段。シンプルに言えば『目的達成のために使える道具』なのです。
受験・入試の合格だけが目標にならないように。それが目標になってしまうと、子どもの未来が大変危ないことになります。その理由と、なぜ勉強が必要なのか?一緒に考えましょう。
教育が変わる時代が来た
今幼い人を育てているあなたは、勉強の意味の転換点にいます。
「いい大学へ行ったらいい会社に就職できて一生安泰」
これが安定生活への最短路線だったのは、もう遠い昔のこと。今(2019年)はご存知の通り『いい大学&いい会社』と『安定生活」の関係がビミョーになっています。※追記2020年現在もそうです。
第4次産業革命が始まった今、頭を切り替えなくてはいけません。
第4次産業革命が起きた
世界中で第4次産業革命の競争が始まっています。悲しいことに、その中でも日本は出遅れているのです。
わたし
わたし(8才)
おさらいしてみましょう。
1700年の終わり頃から。水力や蒸気機関で動力を使得るようになり、工場で機械化が進みました。
キーワード:蒸気機関
1900年代の初め頃スタート。電力で大量生産が行われるように。
キーワード:電力・モーター
1970年代から。電子工学や情報技術でより精密なオートメーション技術が生まれました。
キーワード:コンピュータ
そして今は第4次産業革命。キーワードは4つ。
- IOT(アイ/オー/ティー) :実社会のあらゆる事業・情報がデータ化され、ネットワークを通じて自由なやりとりが可能に
- ビッグデータ:集まった大量のデータを分析することにより、新たな価値が生まれる
- 人工知能 AI (エー/アイ):機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断が可能に
- ロボット:多様で複雑な作業であっても自動化が可能に (2)
新しい技術はあっという間に世界中を飲み込んでいきます。生活に馴染んで、暮らしを変える。教育、勉強の意義も変わるのです。
わたし
わたし(8才)
スキルアップし続ける時代が来る
第1次産業革命から第2次産業革命までの期間は
わたし
第2次から第3次まではやや短くなってます。
わたし(8才)
第3次から第4次はもっと短いです。
わたし
AppleのiPhoneが日本で発売されたのが2008年夏。スマホがなかった生活を思い出せますか?
わたし
わたし(8才)
これから『変化の度合いは加速する』と予測されています。世の中が突然、一気に変わることは前提です。それに次々と対応しながら、仕事していく時代。
「えー?そんなのわからない。できない」だと、幸せになれない時代を生きる人たちを、私たちは育てているのです。
スキルアップが必要→学ぶ力が必要
今働いている大人も『他人事』じゃありません。2018年世界経済フォーラムの研究結果では『調査対象企業の半数強の人は学び直し、スキルアップが必要』と出ています。
(3)
世界のGDPの70%を占める産業と新興経済圏への調査では
・大企業の従業員の54%がリスキリング、スキルアップが必要
・重要な役割の従業員にだけ対策を予定した企業が半数強
・仕事を失うリスクのある従業員に対策を計画している企業は、わずか3分の1である(筆者要点まとめ)
能力の高い人…例えば会社の中心的な職務に着いている人には、会社からの『スキルアップ』や『学び直し対策』が予定されている。でも、仕事が無くなるかもしれない『低スキルの人』には、充分な対策がしてもらえない。
これが現実です。
今からの時代では何歳でも、どんな状況からでも『今以上の技術を身に付けるために学ぶ力』が必要、ということです。(もう一度言いますが、日本は第4次産業革命に出遅れています)
仕事の未来予想は難しい
『◯の仕事をしたい・させたい』という感覚で勉強すると、行き詰まる可能性があります。親は子どもの経験値に大きな影響を与えます。親の古い価値観でしばりつけたまま育ててしまわないように、気を付けたいのです。
今小学校1年生の子が、大学卒業するまでに16年。その頃には『元々目指していた仕事』は消滅しているかもしれない。反対に、全く新しい魅力的な仕事が生まれている可能性もある。その時に、あなたの子どもは柔軟に学べるでしょうか?
勉強の意味を考える
AI(エーアイ)にもロボットにも代わりができない、生身の人間として『ものごとを考える』能力が必要なのです。
人間の生活を経験したひとならではの、新しい発想。ひととうまくやれるスキル。今後、ますます必要です。『考え』『発想し』『伝える』ことができるようになるために勉強するんだ、と考えましょう。
労働者は、現在の職務上の変化と将来発生する新しい仕事へ準備していかなければならない(中略)技術設計やプログラミングなどのテクノロジー運用能力や創造性、クリティカルシンキング、他者を説得する力といった人間ならではのスキルは、今後、重要性が急速に高まる能力です
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覚える。正解を出せる。それは産業機械の超得意分野です。しかもAI(エーアイ)はもっとレベルが高い提案をしてくる。人間は、人間らしい大事な能力を磨かなくてはなりません。
勉強は『目的地』へ行くための乗り物
勉強はどんな役割を持っているのか?人生という旅で例えてみましょう。旅には『目的地』がありますから、まず交通手段を考えるでしょう。車?電車?飛行機・ロケット?乗り物によっては行けない場所もあります。
勉強はこの交通手段。乗り物です。そして燃料が必要。スタートしてすぐ止まってしまわないように『意欲』『努力する力』という燃料も必要。
目標は『目的地』。勉強が『乗り物』、意欲は『燃料』。この3つがあれば、目的地が変わったり増えたりしても大丈夫。人生という旅を続けることができます。
勉強は教科書だけじゃない
教科書とノートを広げているだけが勉強ではありません。今楽しいと思えること、全てが『勉強』としての価値がある。すぐ役に立たなくてもいいんです。20年後に他の勉強と合体して、いい乗り物になるかもしれません。
子どもが今「楽しい」「興味がある」と思えることに、どれだけ出会えるか?「そんなのダメ」と言わず見守ってやれるか。意欲という燃料を作ってやれるのは周りの大人です。
『勉強』をどう捉えるかは親の力量が試されます。子どもが興味を持てるもの全てが『その人の将来を耕す経験値』になるということを心に止めて欲しいのです。『未来を生きていく子ども』の生活を、親の古い価値観で制限してしまわないように。親の考え方もアップデートをお願いします。
参考文献
(1)経済産業省(2017). 第4次産業革命について: 「産業構造部会 新産業構造部会」における検討内容, p. 3. https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_04_00.pdf (2019, April 9). より閲覧
(2)経済産業省. p. 2.
(3)世界経済フォーラム. (2018). ニュースリリース
http://reports.weforum.org/future-of-jobs-2018/files/2018/09/Final.JP_.FoJ_press-release_jp0915-1.pdf (2019, April 9). より閲覧
(4)経済産業省. p. 13.
(5)世界経済フォーラム.