「個性は大事」と、言うのは簡単。
でも多くの親御さんたちは、子どもがよそのお子さんたちと違う行動をするとハラハラします。
真逆の反応の理由は、『理性による個性重視』と『感覚的な価値観』が違うからでしょう。
しかし子どもが持って生まれた個性は、その子のオリジナル。
何よりの強みですから、いいところを見逃さず伸ばしてあげたいもの。
今回は「個性を伸ばしてあげたい」「その子らしさを刈り取らないように育てたい」とお考えの方々に向けての内容です。
個性ってなんだろう
個性とは何か?
辞書には『そのものの持っている特性』『個人が持っている性質』などとあります。
『特性』は『特有の性質』。
『性質』は『持って生まれた気質、たち』です。
その人らしさとでもいいましょうか。
この性質・性格は遺伝することがわかっています。
性格は少なくとも60%程度は遺伝によって決まることになる
(1)
わたし
わたし(8才)
遺伝と環境の組み合わせで、複雑に作られるのが『その人の性格・個性』ですね。
子どもはみんな個性的
『個性』を『生まれたままの性質』と言うならば、赤ちゃんはまさに個性的。
自分の要求・欲望のままに生きています。
ご機嫌なら笑う。具合が悪ければ泣く。
身体の状態がすぐ表れます。
知らない人に抱っこされた時、嫌ならすぐにウギャーッと泣きますし。
3〜5歳さんだって「お絵かき好き」「こっちの絵本がいい」と好みをはっきり言えます。
「お空の雲を飲んだらお腹がつめたくなった!」なんてオリジナリティあふれる表現で大人を感心させてくれることだってあります。
成長したら『個性』がなくなる?
小さい頃は自分の気持ちや希望に正直だった子どもが、いつの間にか変わっていきます。
わたし
わたし(8才)
答えのひとつとして『人の立場がわかるようになっていくから』があるでしょう。
これは嬉しい成長でもありますね。
人の気持ち、その場の状況、いきさつ。
いろいろわかるようになって「合わせておいた方がお互いにいい」と『考えることができるようになった』から、変わったのです。
これは「合わせておいたほうがいい」の健康的な使い方だと言えます。
問題のある「合わせておいた方がいい」3種
合わせた方が『楽』
とんがっていると目立つ。目立つといろいろ言われがちです。
わたし
でも『面倒だから』『楽だから』サラーッとその場をしのいでしまうと、しつこいクセになります。
いざという時に立ち上がる力を弱くしてしまうかもしれません。
『楽』をしすぎるのは本当の『楽』にならないことを、子どもたちには知って欲しい。
合わせないと『後で大変』なことになる
『自分を捨てて相手(状況)に合わせる』。
これは自分が置き去りになった考え方です。本音と建前の間で苦しいパターンとも言えますね。
こんな子どもがいたら、助けなければいけません。
『後で大変』なことを引き起こす原因が何か。
見つけて救ってあげるには、親や周りの大人の力が試されます。
わたし(8才)
『合わせる以外に思いつかない』
これは自分で考えることをやめてしまったパターンです。
そもそも『感じる』と『考える』は、同じラインの上にある習慣。
『何かを感じ』たら、それについて『どうするか考える』のが脳の反応、働きの実態です。
でも『合わせるのが習慣』であることは、自分の感情や思考の工程をごっそり抜いた絞りカスになること。
これでは『自分を自分として認める』ことができません。
自己肯定感も高まらないでしょう。
わたし
わたし(8才)
『人が決めたことに文句を言わない』のは、一見『自分の身を守る』ようにも見えます。
でも実際は、自分で自分を痛めつけてるのと同じなんです。
『考える』を鍛えよう
『考える』ことは筋トレと同じです。
最初は苦しいし面倒。
でも続けるうちに、必ず習慣になります。
「あなたはどう思う?」と、子どもたちに聞いてあげましょう。
わたし(8才)
わたし
その時どんな答えが返ってきても「そんなんじゃダメ」などと言わないでいただきたいのです。
考えることは、子どもにとっては大仕事。
その結果を大切に受け取ってもらえなかったら……?
考えることが嫌になってしまいます。
わたし(8才)
明るく、肯定的に「あなたはどう思う?」「そうなんだね」「じゃあどうしようか?」と会話を楽しみましょう。
会話は脳をフル回転させ、脳の働きを高ます。
個性的であることを保障してあげる
親は、子どもの成長を本能的に願うもの。
だから『他の子が出来ること』はうちの子も出来て欲しいと思ってしまいます。つい、周りと比べてしまう。
しかしそれは『他の子が基準』になった、危険な考えだと腹をくくりましょう。
他の誰もが考えなかった・感じなかった・言わなかった・行動しなかった……唯一無二の独自性を捨てることになるからです。
個性を認めて貰えば自信が育つ
刈り取られなかった個性の芽だけが、年齢とともに伸びていく。
そうした個性がこの世界を大きく変えてきました。
・蒸気機関を発明したワットさん
・(諸説ありますが)航空機発明の父と呼ばれるライト兄弟さん
・アインシュタインさん
偉大な人たちは
『他人と同じことをしない勇気を持って』『自分の好きなことに熱中した』のです。
「みんなと同じことをしないから」と心配しすぎて、親の価値観の中に子どもを押し込めてしまうのは、とても危険でもったいないこと。
子どもは新しい考えや生き方を教えに来てくれたひとなのです。
参考文献
(1)澤口俊之, 幼児教育と脳, 文春新書, 1999, p. 49