スマホの使用。誰にとって『いい』のか『悪い』のか?
わたし
わたし(8才)
「電車やバスに乗っているときにおとなしくしてくれるので、つい見せてしまいます。大丈夫でしょうか?」心配そうに相談されたことがあります。
わたし(8才)
専門家・科学者や研究者だったら、その人なりの基準で『使う/使わない』を決められるでしょう。
でも『判断・決断の材料すらない』のが本当に困るんです。
インターネットの研究者が書いた本
『インターネット世界の専門家』と呼ばれる人はどう考えているんでしょう。
わたし
わたし(8才)
書いたのは『サイバー心理学者』メアリー・エイケン博士。
『携帯電話からサイボーグまで』研究する中、特に『インターネットと人間の関係』に注目している人です。
『サイバー効果:サイバー心理学のパイオニアによるオンライン上での人間行動の変化に関する解説』と英語のサブタイトルが付いてます。
わたし(8才)
サイバー効果とは『インターネットというサイバー空間が、人間の『ものの考え方』に影響を与えて、行動も変えてしまうこと』
・・・だそうです。
この本の中の『赤ちゃんとモバイル端末の関係について今わかっていること』に絞って進めていきます。
スマホ育児は発達に影響が出るおそれがある
わたし
わたし(8才)
エイケン博士だけでなく、子どもの発達や脳の仕組み・心理学の研究者たち共通の常識があります。
『赤ちゃんは生身の人間と目を見て交流する時間が必要』
ってこと。
これはとっても大切なことだけど、今までわざわざ注意されることではなかったんです。
わたし(8才)
わたし
赤ちゃんのお世話をしたりおっぱいミルクをあげる時、ほかに目を向けることってそんなにありませんでした。
検診の時に「テレビ見ながらはやめましょうね」って言われる程度。
目が合ったらあやすでしょう?
お世話しながら自然と赤ちゃんを見るし、笑顔になっちゃいます。
わたし
わたし(8才)
ヒトはテレビやスマホが無い時代を生きて進化して来ました。
わたし
わたし(8才)
子育ての基本とは何でしょう。
わたし(8才)
『その生き物らしく』育てることです。
わたし(8才)
人間らしく子育てしましょう。
過去の研究から『生身の人間との間に交流を持たないと発育に影響が出る』ことがわかっています。『発育に影響』とは『人間としての能力を発揮できる状態まで発達できない』という意味を含みます。
母親とその子供は、お互いに注意を向け合う必要がある。(中略)進化論の観点から話をすると、幼児は(中略)愛らしさを持っている。それは彼らが注意を向けてもらうことを必要としており、そのために容姿で大人を引きつけようとしているからだ。(中略)もし赤ちゃんがこれほどキュートでなかったら(中略)保護者とのやりとりを通じて教わることを学べなくなるかもしれない。そうした絆やつながりのパターンが適切に形成されないと(中略)学習に必要な神経回路を発達させることができない場合がある。そうした欠如があまりに深刻な場合には、子供は他人との絆のつくり方を学べなくなってしまう。あるいは他人の愛し方すらも。(中略:筆者)
(1)
だいぶ長い。ごめんなさい。
簡単に言うと『赤ちゃんは正しく発達するための仕組みとして、保護者が見たくなるような可愛い姿をしている。もし保護者からの注目が無くなったら正しく発達できなくなる場合がある』ってこと。
目を見合わせるのは人間発達の基本。土台です。
赤ちゃんや幼児さんにスマホを見せていたら?
わたし
わたし(8才)
『生身の人間』とのアイコンタクト経験が減ります。
育てる側がスマホばかり見てしまったら?
わたし
わたし(8才)
これもまた生身の人間から受ける刺激が減ります。
スマホは赤ちゃんや子どもが見ていないときに使いましょう。
視覚発達への影響は確かめられていない
目がちゃんと見えるようになるには『新生児の頃から8歳ごろまでの間がとても大事な時期』だとわかっているんです。
外界からの刺激によって脳の神経回路が集中的に作られる時期のことを感受性期といいます。人間の視覚の感受性は、生後1か月から上昇しはじめ1歳半ごろにピークに達し、その後徐々に減衰してだいたい8歳ごろまでに消失すると考えられています
(2)
生まれたての頃、赤ちゃんはぼんやりとしか物が見えません。
それでも『顔』を見る専用の脳の部分がちゃんと働いて、お母さんやお父さんの顔を見つけ始めます。
顔を何度も見るうちに『顔を見る(ことができる)練習』が進んで行くんです。
使わない道具は錆びます。壊れます。
『見るための脳』も使わないと発達できないんです。
生まれて間もない頃(中略)の視覚経験が、永続的、かつ不可逆的な影響を及ぼすことが明らかになっている
(3)
生まれてしばらくの間に経験した『見ること』が、その先ずっと、元に戻せない影響を与えるーーーということですね。
1958年。ある研究者が『生まれて3ヶ月の子ネコの片目を、開かないように縫い合わせ』ました。
視力の発達と脳の仕組みを調べるために実験したんです。
わたし
わたし(8才)
実験からわかったことは。
『その後まぶたが開くようにしても、閉じていた片目はよく見えないまま(弱視)になってしまう』ってことでした。
子ネコは片目の視力を伸ばすことができなくなったのです。
生まれて成長する間には『この期間に正しい刺激を受け取らないと、その後では取り戻せない能力』がいくつかあることがわかっています。
視力もそのひとつ。
目の機能を発達させる期間は『正しい刺激』が必要なんです。
人間の目の進化に対してたったの10年程度の歴史しかない『スマホの刺激』。それが『視力にとって正しい刺激』なのか?
誰も「大丈夫!」と『保証』はしてくれません。
スマホ老眼予防できる?
わたし
わたし(8才)
わたし
わたし(8才)
『スマホ老眼』なる新しい『症状』も知られるようになってきました。
目ショボショボ。ピントも合いません。
『視覚の発達』が終わった10代の若者でさえスマホ老眼になります。
わたし
わたし(8才)
スマホ老眼は予防できるそうです。時々遠くと近くを交互に見て、筋トレするんだそう。確かに遠くを見ると目が楽になります。
しかし。この予防法を乳幼児さんたちがやってくれるでしょうか??
わたし
わたし(8才)
そうまでして幼い人たちにスマホを使わせる?
メリットとデメリットをちゃんと比べなきゃいけません。
少なくとも、わたしはまだ『スマホのおかげで目がよく発達した』という研究報告には出会っていません。
米国小児科学会『2歳未満には画面を見せるな』
1999年。
米国小児科学会(AAP/American Academy Of Pediatrics)は『2歳未満の子どもにテレビを含む画面を見せることを推奨しない』と発表してます。
この発表が2011年に『十分な研究に基づく提言』として↓こうなりました。
『2歳未満の子どもにテレビを含む画面を見せないよう勧告する』
https://services.aap.org/en/search/?context=all&k=media%20children%20used%20by%20younger%20than%202
推奨=『すぐれていることをほめて、その物を人にすすめること』
勧告=『ある行動をとるように説きすすめること』
(4)
『とてもいいもの、というわけではないので画面を見せることはオススメしません』とやんわりだったのが・・・・
↓
『画面を見せないようにしてください』と強い言い方に変わったんです。
これら(テレビやスマホなどの画面)が子どもの発育に悪影響を及ぼすおそれがあるとAAPは結論づけたのである()内筆者
(5)
結局スマホどうする?
米国小児科学会が『2歳未満には画面を見せるな』と勧告したにもかかわらず、さほど守られていない。
「赤ちゃんが静かにしてくれるんだから、うまく使った方がいい」と言う声だってあります。
もちろんいつかはスマホを使うようになる子ども達です。どこかのタイミングで安全な使い方を練習しなきゃいけません。
家庭内からスマホを『完全に無くす』のも、もう無理でしょう。
わたし
わたし(8才)
ではどうするか?『ルールを決める』しかありません。
- 何歳から?
- 何ができるようになったら?
- 使わせる目的は?
- 使っていい時と場所は?
- 使っていいアプリの決め方は?
- 機種は?
- フィルタリングは?
- 時間制限は?
- インターネットに関する親の知識は?
- ルールを守れなかったら?
- ルールを守っていると確かめる方法は?
- 困った時に相談する相手は?
全部『家庭の意識次第』です。
簡単に『スマホは反対!』とか『スマホ便利だしいいじゃん』なんて決められません。
『今までこの世になかったものと共存していく』ためには簡単に決めちゃダメなこともある。
面倒がらずに。
『我が家の使い方』をしっかり考え続けることが必要です。
子育て中のスマホとの共存はここからだと思います。
参考文献
- (1) メアリー・エイケン. 子どもがネットに壊される: サイバー・エフェクトいまの科学が証明した子育てへの影響の真実, ダイヤモンド社, 2018, p. 8-9.
- (2)日本眼科学会(2019). 弱視. http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_amblyopia.jsp (2019, March 5).
- (3)メアリー・エイケン. 子どもがネットに壊される: サイバー・エフェクトいまの科学が証明した子育てへの影響の真実, ダイヤモンド社, 2018, p. 22.
- (4)デジタル大辞泉
- (5)メアリー・エイケン. 子どもがネットに壊される: サイバー・エフェクトいまの科学が証明した子育てへの影響の真実, ダイヤモンド社, 2018, p. 25.