子育てにスマホ。『本当に危険』ならなぜ規制されないのか?

薄暗い部屋の中で明るいスマホの画面を食い入るように見つめる幼い男の子

わたしは少なくとも3歳の誕生日を迎えるまでは『持ち歩けるスマホは見せないでほしい』と思っています。

乳幼児への発達に悪い影響がある、という研究結果が出ていることを無視することはできません。

乳幼児のテレビを見る時間が長くなればなるほど、彼らが7歳になるまでに(中略)注意力に問題を抱えるおそれが高まることを発見した(中略)テレビやビデオゲームのような長時間の画面使用は、注意力や学習の面で問題を抱えるリスクと、長期的な学業成績の低下に関連している可能性があることを確認している

(1)

『持ち歩ける画面』は親のポケットやバッグにいつでも入っています。

理性を手に入れる年齢まで育っていない子どもが一旦味をしめると、我慢が辛くなる。危険です。

ならば規制すればいいのに。

…と思うけれど、そうはなかなかならない。

ここでは『なぜ乳・幼児のスマホ利用が規制されないのか?』について話を進めていきます。

法律で規制するのは難しい

法律で決めてくれたら、ある意味楽です。

「◯歳までは使っちゃダメ」「1日30分までならいい」とか。

もう考えないで済むよ

わたし(8才)

それができないのには、わけがあります。

使用禁止するには証拠が必要です。

スマホやアプリの会社だって「販売禁止は困る。証拠を出せ」と言うでしょうし。

簡単には出せない証拠

スマホ利用は乳幼児に悪影響を及ぼす、という根拠を出すためには実験が必要です。

実験で『因果関係』を出さなければ法律での規制は困難でしょう。

なんで?

わたし(8才)

「スマホを見たから発達に遅れが出た」という証拠を出す実験はできないから。

例えば国や研究者が年齢・使用時間ごとにスマホ利用の危険性を調査するとします。

『Aグループはスマホを全く見せない』

『Bグループは1日6時間スマホを見せる』ようなことになるでしょう。

そして10年後に結果が出たとします。

『ほら、Bグループの子どもは発達に異常が出てますね』なんてことになったら。これは許されないでしょう?

Bグループの子どもたちには大迷惑です。

『発達に悪影響が出る証拠を見つける実験』は倫理的にできないんです。

乳児向けビデオ、DVD,タブレット、そしてアプリ(についてー中略)なぜ販売会社は「効果がある」と宣伝できるのだろうか?(中略)企業の主張を反証する研究が確立されない限り(中略)好きなことが言えるのである(後略)

(2)

『証拠がないなら売るし、宣伝もしますよ』ってことができてしまいます。

売る側にデータを出して効果を示す姿勢を求めたい。

乳児向けビデオで裁判

悪影響を示す証拠は出せなくても、企業に『利用の価値があるのか?』と求めた例があります。

1997年にアメリカで発売開始された、2歳未満の乳児向けビデオ『ベイビー・アインシュタイン』という早期教育DVDの例。

『赤ちゃんの脳を刺激することで、彼らの知性を伸ばすことができ、赤ちゃんを天才にすることすらできる』と主張していた

(3)

このDVDは爆発的に売れたそうですが、『天才ににすることすらできる』科学的な根拠は不明です。

0〜3歳向けのDVDを売り出した時点で『そのDVDを見ることで天才になった人』は存在するわけありません。

創業者が開発の根拠にしたのは『生まれて3年間の急速な脳内シナプス形成期に刺激を与える』という理論でした。

(生後3年間にシナプス形成が急激に進むのは科学的事実です)

ベイビー・アインシュタインは爆発的に売り上げを伸ばし、あのディズニーも出資者に名を連ねることに。

しかし2006年『虚偽の主張をしている』と訴えられます。

「天才になるって嘘じゃないの?」って訴えです。

調べるために研究が行われました。

これは自発的にDVDを買って我が子に見せていた人たちがたくさんいますから、調査ができます。

結果は。

『続けてDVDを見ていた子どもの方が、見ていなかった子どもより言葉の理解が進んでいたとは言えない』というものでした。

違う調査結果を出した研究機関があります。ワシントン大学の発表では『言葉の発達を遅らせるおそれがある』という内容でした。

『効果がない』と『発達を遅らせる』では大違いです。

今度はベイビー・アインシュタイン創業者がワシントン大学を訴える泥沼状態に。

結局どうなったか。

DVDは乳児の発育にほとんど、あるいは全く影響を及ぼさないとの結論に至った

(4)

人体実験出来ない以上、どちらも決定的な証拠は出せないのでしょう。

改めて「じゃあどうする?」です。

専門家もスマホとの関係を手探り中

『発達に悪影響を及ぼすおそれ』

『ことばの数が少なくなるという研究結果』

『視力への影響は(今のところ)不明』

スマホに限らず『画面』を見ることの乳幼児への影響について、専門家からいろんな意見が出ています。

専門家・研究者ですら、完全にわかってはいないのが現実です。

いろんな分野の専門家の意見が出るたびに、私たちも情報をアップデートしなければなりません。

想像力も大事です。

『スマホだけでなく、テレビ画面を2歳までの赤ちゃんには見せないように』

アメリカの小児科学会は正式な勧告を出しています。(5)

フランス政府は2008年、乳幼児向けの番組の放送を禁止しました。

台湾でも法律での規制が進もうとしています。

カナダ、オーストラリア・・・

『危ない可能性があるなら用心しよう』という発想が法律を変えようとしています。

「じゃあ、我が家ではどうする?」ってことになります。

サイバー心理学者、メアリー・エイケン博士の書籍に提案がありました。一部抜粋してまとめるとこんな感じ。

・2歳(できれば3歳)までは『画面』を見せない

・2歳(できれば3歳)を過ぎても幼児にひとりで使わせない。責任ある大人が一緒に使う。

・強い(過度の)刺激が子どもの脳の発達に悪影響を及ぼすおそれがあると発表した研究者がいることを知っておく

・1日に2時間以上『メディア(テレビや動画など)』にさらされている赤ちゃんはその時間の長さによって発達の遅れや注意力・言葉の能力に遅れが出るおそれがあることを知る

・親自身もスマホチェックやゲームにどれくらい時間をかけているか振り返る

今後新しい情報が出た時「それほど不安がることなかったじゃん!」で済めばいい。

「我が子に見せてなくてよかった」とホッとするかもしれない。

『考えることをやめない。新しい情報を知るのが大事』ってことは間違いないです。

web上にこんな意見を発信してる時点で、かなり矛盾をはらんでしまうけど。

どうかスマホ利用で子どもとの時間を減らさないでほしいと願わずにいられないのです。

参考文献

  • (1)メアリー・エイケン. 子どもがネットに壊される: サイバー・エフェクトいまの科学が証明した子育てへの影響の真実, ダイヤモンド社, 2018, p. 46.
  • (2)メアリー・エイケン. p. 23.
  • (3)メアリー・エイケン. p. 16.
  • (4)メアリー・エイケン. p. 18.
  • (5)American Academy of Pediatrics, Children and Media Tips from the American Academy of Pediatrics. 2018. https://www.aap.org/en-us/about-the-aap/aap-press-room/news-features-and-safety-tips/Pages/Children-and-Media-Tips.aspx より閲覧

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